施設栽培で効率化を追求 若き兄弟が挑む「儲かる農業」

京野菜の栽培が盛んな上賀茂地区で、トマトの養液栽培・レタスの水耕栽培を軸に営農規模拡大を目指す安井奎介さん・久登さん。地域農業の未来を担う兄弟に、実践する農業の特徴や、将来への思いについてうかがいました。

トマト養液栽培のパイオニア

京都市左京区・静原。豊かな自然が残るこの地に、安井農園のハウスがあります。ここで実践するのは、トマトの養液栽培とレタスの水耕栽培です。特に、土を使わず、植物の生育に必要な水分と養分を溶かした培養液で育てるトマト栽培は約30年前から継続しており、上賀茂地区ではパイオニア的存在。代表の安井 博良さんは「上賀茂園芸研究会」会長を務めるなど、地域の農業の発展をけん引してきました。

その博良さんを父にもち、ともに安井農園を盛り立てているのが奎介さん、久登さんの兄弟です。二人の就農を機に安井農園は営農規模拡大を積極化させ、6年前からはレタスの水耕栽培もスタート。水稲や各種の露地野菜を含め、年間を通してさまざまな品目を栽培しています。

その味と鮮度は、地域の卸・小売り業者や消費者が高く評価しており、地元スーパーには「安井農園コーナー」が設置されるほど。他スーパーの地場野菜コーナーや直売所を含め、販路も着実に広がっています。

兄はトマト、弟はレタス それぞれの農法を確立

トマトの養液栽培を担当するのは、兄の奎介さんです。栽培規模は約50Rで、夏と冬に収穫する年2作。温度や水やり、肥料濃度などは自動制御されており、また培地には性質が安定しやすく、病気の広がりを防ぎやすい「ヤシ殻培地」を使用するなど、栽培の効率化を進めてきました。

品質の向上にも強いこだわりをもっていますが、「品質を高めるには、まずは収量を上げること」という奎介さん。収量を増やすプロセスで、質も上がってくるといいます。
「きっかけはある農業指導者の方のアドバイス。トマトがたくさん採れるということは、栄養が行き渡っているから、というのがその根拠で、実際に収量を上げるうちに味がどんどん良くなっていきました」。
施肥についても、低い濃度からはじめ、徐々に高めていくことが一般的ですが、奎介さんはその逆のやり方を採用。既成概念にとらわれず、良いと思ったことはどん欲に取り入れてきました。

一方、レタスは弟の久登さんの担当です。栽培の安定性と、年間を通して収穫できる点が水耕栽培のメリットで、現在は約300坪の専用ハウスで、リーフレタスと「サラノバ」という品種を栽培しています。

品種管理が厳格な「サラノバ」は、限られた生産者だけに栽培が認められる希少な品種です。水温管理が難しく、栽培には細心の配慮が求められますが「食材を載せられるように改良された品種なので飲食店の需要が高く、他の品種より付加価値が高いんです」と久登さん。百貨店を中心に卸しており、さらなる需要を見込んで今後の増産も計画しています。

トマト栽培では、高所にワイヤーを設置する「ハイワイヤー」栽培を導入。栽培管理がしやすいだけでなく、作業時にかがむ必要がないので、作業を任せるパートスタッフの腰への負担が軽減されるというメリットも。
スタッフの手配も含む生産計画が立てやすい点も、水耕栽培の特徴。

鮮度と日々の観察を何より大切に 同じ志のもと、見据える未来

それぞれの考え方や計画に沿って営農規模を拡大してきた二人ですが、農業へのこだわりには相通じる点も見られます。特に野菜の「鮮度」を守ること、その妨げとなる生育不良や病気に気付くための「日々の観察」は、何より大切にしています。
「味は鮮度で大きく変わりますから、とにかく新鮮なものをお客さんに届けたい」
「毎日状態を見て、ちょっとした変化に気づくことが大切。トマトなら葉の色や形を含む「樹の姿」に違和感をもったら、早めに手を打つようにしています」(奎介さん)。

「朝収穫して、早ければその日の夕方にはスーパーに並ぶので、日々の生育状況やサイズ感を見極めることが大切」「特に『サラノバ』は暑さに弱いので、状態を細かくチェックすることが大切です」(久登さん)。

また、今後についても同じ目標を掲げる二人。
「目指すのは儲かる農業。人手不足や資材高騰といった問題はありますが、まだまだ規模を拡大したい。将来は『野菜といえば安井農園』と言われるぐらい、名前を広めたいですね」(奎介さん)。
「市内ではある程度の規模でやっていますが、全国に目を向ければまだまだ。今は情報を集めつつ、さらなる拡大を模索しています」(久登さん)。

志をともにする若い兄弟が、地域農業の未来を支えていきます。

天候次第でタイミングが変わる収穫作業など、急を要する事態でも柔軟に協力し合える点は、兄弟・家族で農業をするメリットの一つ。「従業員にはできない相談も、兄弟なら遠慮せずできますね」(奎介さん)。
農業人口の減少や高齢化といった逆風が吹く中でも、「農業はなくてはならない仕事」と胸を張る久登さん。「『農業を諦めている』雰囲気を感じることもありますが、農業は食文化の中心。その将来を担えるように、頑張っていきたいと思います」(久登さん)。

安井奎介さん・久登さん
静原地区でトマト・レタスの水耕栽培を手掛けるほか、亀岡では水稲栽培も行う。2020年に「㈱安井農園」として法人化し、さらなる効率化、販路・規模拡大に取り組む。

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