同志社大学広告研究会add’sに所属する学生たちが、太秦地域で農業を営む加納靖彦さんの圃場を訪れました。学生たちは収穫体験や生産者との対話を通して、都市の暮らしの中で農業を守り続ける生産者の思いや工夫に触れました。都市農地は、私たちの食を支えるだけでなく、防災や地域コミュニティを支える役割も担っています。地元の農業を応援する「地産地消サポーター」として参加した4人の学生が、それぞれの視点から都市農業の魅力と価値を体験記としてまとめました。
農業と大学生
今回の農作業体験では、日常生活ではほとんど触れることのない土に手を入れ、畑で作業する時間がとても新鮮で貴重なものに感じられました。直売所で野菜を購入した際の短いやり取りからも、普段利用しているスーパーマーケットではなかなか得られない、人とのつながりの温かさを実感しました。スマートフォンやインターネットに囲まれた生活から少し離れ、青空の下で汗を流しながら自然と向き合う時間は、これまで気づかなかった感覚に出会い、心がほぐれるようなひとときでした。
今回の体験は、生産者として私たちを受け入れてくださった加納さんのおかげで実現しました。加納さんは「克己心」を持って一歩踏み出すことの大切さや、挑戦することで視野が広がることを教えてくださいました。農業に触れることが、自分自身の可能性を見つめ直すきっかけになるかもしれません。
人と人とが繋がる都市農業
畑のすぐそばに暮らしがあり、消費者がいることは都市農業ならではの強みです。加納さんの畑の周囲にも住宅街が広がり、朝に収穫したナスが約2時間後には買い手の手元に届くほどの近さが、野菜本来のおいしさを最大限に引き出しています。加納さんは「鮮度がいちばん大切です」と話してくださいました。
その言葉どおり、畑から直売所に並ぶ野菜はみずみずしく、香りも格別です。直売の場では「どう調理するとおいしいですか」「今日はどれがおすすめですか」と自然に会話が生まれ、作り手が直接伝えることで安心や楽しさが広がっていきます。私たちが伺った際にも、お客さんが加納さんと言葉を交わしながら楽しそうに野菜を選ぶ姿が印象的でした。加納さんは、かつては市場出荷を行っていましたが、よりよい形で野菜を届けたいという思いから、現在の直売という方法を選ばれたそうです。鮮度だけでなく、信頼や食の楽しさまで届けることこそが、都市農業の大きな魅力なのだと実感しました。
当たり前ではない「食」
「世界で最初に飢えるのは日本」という東京大学・鈴木宣弘氏の言葉を引用しながら、加納さんは私たち大学生に、食料自給率の低さが示す日本の食の危機について真剣に伝えてくださいました。食べられなくなる未来は決して他人事ではなく、歴史を振り返れば兵糧攻めが人々の命を左右してきたように、「食」を失うことの深刻さは明らかだと話してくださいました。
普段は農業と距離のある暮らしをしている私たちは、豊かに並ぶスーパーの棚を前に、食が不足する現実を想像する機会がほとんどありません。しかし、日々農業に向き合い、自然や社会の変化を直接感じている加納さんには、その危機がより現実味を帯びて映っているのだと実感しました。当たり前のように身近にある「食」は、本来当たり前ではなく、私たちの暮らしを支える大切な基盤です。
加納さんのお話を通して、食を大切にする意識を持ち続けること、そして日々口にする食べ物一つひとつに感謝する心を忘れてはならないのだと、改めて強く感じました。
農業が担う災害対策としての役割
日々の暮らしの中で食を大切にしていく意識を持つ一方、地震や火災といった突然の災害は避けられないものだと、今回の訪問を通して改めて実感しました。
圃場に実際に足を踏み入れて辺りを見渡してみると、都市部にある圃場は災害時に周囲からさまざまな影響を受けやすいのではないかという不安が浮かびました。また、そのような状況で都市農業に求められる役割は大きすぎるのではないかという疑問も頭をよぎりました。しかし加納さんは、「災害のときこそ都市農業の価値が生きる」と話してくださいました。農地は一時的な避難場所となり、火災の延焼を食い止める空間としても機能するそうです。加納さんの言葉には重みがあり、この土地を未来へ受け継いでいきたいという思いも強く伝わってきました。
生活がどれほど変化しても、都市農業には身近に「安心」をもたらす力があります。今回の体験を通して、私たち学生がその価値をどのように伝え、未来につなげていけるのかを考えるきっかけをいただきました。
今後は広告研究会add’sとしてSNSでの発信を含め、自分たちにできる形でこの学びを社会に伝えていきたいと思います。
加納 靖彦さん
JA京都市 太秦支部
右京区太秦エリアを拠点に農業を営む。圃場で作った野菜は近くの直売所で販売し、地産地消を実践されています。
〇同志社大学広告研究会add’sとは
「きのうより、おもしろい、きょうを。」「ローカルに知を追求し続け、社会に寄り添う集合知となる」をコンセプトに、フリーペーパーを作成したり、マーケティングコンペを開催する、会員数約150名の同志社大学公認サークルです。京都市営地下鉄の「広告の広告」を今年を含め4回作成したり、学内の水「最裏級」のパッケージリブランディングなど幅広く活動しております。
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