栽培しやすく、栄養豊富&使い勝手も良し 上鳥羽の生産者トリオが広げる「京ラフラン」のポテンシャル

京都市が、大学や生産者と連携して開発した「新京野菜」。中でも病気に強く、栄養が豊富な春の野菜が京ラフランです。京都市上鳥羽地域で京ラフランを栽培している3名の生産者に、京ラフランの特徴や栽培方法、PR活動などについてうかがいました。

京ラフラン三銃士

3月中旬から5月中旬に旬を迎える京ラフランは、「大根」とキャベツの仲間である「コールラビ」をかけ合わせた新しい野菜です。葉物野菜でありながら菜の花(花蕾)も食べることができ、生で食べれば大根のような食感、茹でるとキャベツのように甘味が増すのが特徴。さらに食物繊維やカルシウム、ビタミンCといった栄養素を豊富に含んでいます。

「畑を通りかかった人から『この野菜何?』とよく聞かれるんです。その度に説明するのも面倒になってきたので(笑)、そろそろ皆さんに知ってほしいですね」というのは、上鳥羽地域の生産者、塩津さんです。同じ上鳥羽地域の長谷川さん、伊原さんとともに、2017年頃から京ラフランの栽培を続けています。

はじめに栽培をはじめたのは「拓ちゃん」こと最年少の伊原さんです。毎年の端境期に、キャベツより手間なく育てられると聞いて栽培をスタート。「1人でやるより皆を巻き込んだ方が面白いだろう」と塩津さん、長谷川さんにも声をかけました。

京都市内でも大規模な産地である上鳥羽では、金時人参や水菜といった京野菜の生産も盛んに行われています。生産者同士の交流も活発で、「特に現役世代は横のつながりが強いと思います。僕たちもしょっちゅう京ラフランのことで電話してますね(長谷川さん)」と、こまめに情報交換をしながら、栽培方法を確立してきました。

社会人経験豊富な塩津さん(左)、京ラフラン栽培の先陣を切った伊原さん(中央)、明るいキャラクターを生かして京ラフランのPR活動にも力を発揮する長谷川さん(右)。親密な間柄の中に、同じ生産者として互いをリスペクトし合う一面も。

手間いらずの優等生野菜

新京野菜は病気に強く、栽培しやすい品種として開発されました。京ラフランも「気を付けるのは雑草の管理ぐらい(伊原さん)」、「病気は月に一度ぐらい根元を調べて、必要であれば少し農薬を使う程度(長谷川さん)」、「越冬さえさせれば、多少時期がズレても大丈夫(塩津さん)」と、栽培のしやすさは三人のお墨付きです。

また、3月中旬から5月初旬頃という端境期に収穫できる点も、生産者にとっては大きなメリット。「春キャベツも同じ時期に収穫できますが、京ラフランはより病気に強いんです。また、同じ葉物である水菜やほうれん草はこの時期とうが立ちますが、京ラフランはその心配もいりません」(塩津さん)。

さらに品種改良を重ねることで、開発当初よりも筋が残らなくなり、皮を剥かずにそのまま食べられるほど食感が柔らかくなっているため、食べやすさ・調理のしやすさも格段にアップ。「軽く炒めてパスタに合わせるのが僕のおすすめ。茎を薄く切って、めんつゆ、クリームチーズとあえてもおいしいですよ(伊原さん)」、「天ぷらにすると、あっさりして食感も楽しめます(長谷川さん)」、「お好み焼きに使うと、キャベツより甘味が出ます(塩津さん)」と、それぞれおすすめの食べ方を教えてくれました。

また、えぐみや苦みがなく、甘味が強すぎることもないため、副菜の材料としても非常に優秀。「それでいて緑黄色野菜並みの栄養価をもっているため、小さいお子さんのいる家庭にも、普段の献立に取り入れてほしいですね(伊原さん)」。

塩ゆでツナ醤油
ツナと醤油でサラダにしたり、鶏肉と炒めてアクセントにハーブを加えても美味。クセの少ない味と食感は、料理のタイプを問わず幅広く使えます。味や栄養価だけでなく、葉と茎、花蕾まで食べられる点は、料理人からも高く評価されています。

さらなる普及のカギは、生産者を増やすこと

味が良く、栄養価が高くても、京ラフランのような新しい野菜は店頭で手に取ってもらうまでが難しいといいます。3人が栽培を始めた頃も「こんなに知られていないのか」というほど知名度不足を感じましたが、市場出荷や市内飲食店向けなどの販路を開拓し、さらにメディアの取材対応や料理教室とのタイアップなど、PR活動を地道に続けてきました。

2020年頃からコロナ禍に入ると、頼みの飲食店向けの出荷が落ち込みましたが、JA京都市や全農の協力によって、スーパーマーケットなどの量販店にも京ラフランが並ぶように。「ほかにもパッケージのデザインや、東京や横浜にも流通させてくれるなど、本当に助かっています(塩津さん)」。さらにコロナ禍が収束しつつある近年では、新たに飲食店とのコラボ企画なども立ち上がっています。

じわりと認知度が高まる一方で、生産量が限られているという課題もあります。「毎年目一杯作っているつもりですが、3人の収穫量には限りがありますから、今後販路が広がっても商品が供給できないということになりかねません(塩津さん)」。だからこそ、自分たち以外に京ラフランの生産者を増やし、流通量を増やすことが、認知度やブランド価値の向上にとって大切だといいます。
「上鳥羽には家族経営の生産者が多いのですが、市場向けの単価が下がり、気温の上昇が続く昨今の状況を考えれば、より多くの生産者が集まり、協力した方が絶対に良い結果になると思うんです」と伊原さん。大きなポテンシャルを秘めた京ラフランが脚光を浴び、生産者仲間が数多く現れる日まで、三銃士の奮闘は続きます。

塩津祐輔さん、長谷川喜章さん、伊原拓利さん。いずれもJA京都市上鳥羽支部組合員。塩津さんは「紅芯大根」や「カリフローレ」といった新しい野菜にもトライ。長谷川さんは京ラフラン以外にキャベツやネギ、ほうれん草などを栽培。伊原さんは無農薬栽培を実践しています。

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