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手塩にかけた野菜が教えてくれること。住井さんと考える、これからの「農」の価値

京都市吉祥院の生産者、住井 陽さん。桂川の豊かな土壌の恵みを受けながら、こまめな観察と丁寧な水やりで育てる枝豆は、強いコクと甘みで高く評価され、全国へと届けられています。おいしさの秘密や、栽培のこだわり、そして地域とともに歩む農業についてお話を伺いました。

豊かなコクと甘みをもつ黒枝豆

8月初旬、吉祥院の桂川河川敷にある住井 陽さんの畑では、枝豆の収穫が行われていました。ここで栽培しているのは、早生品種の黒枝豆。実はそれほど大きくはなりませんが、粒はふっくらとしていて、甘くほくほく、もっちりとした食感が特徴です。
黒枝豆特有の芳醇な香りと、豊かな甘みやコクがあり、塩茹でにするとその味わいがさらに際立ちます。ぷりっとした歯ごたえは、冷えたビールにもぴったりです。

このおいしい枝豆を育んでいるのが、河川敷ならではの土壌です。「砂でもなく土でもなく、水はけや水持ちがちょうどいい」と住井さんが語る良質な土壌に、鶏糞や濃縮堆肥、混合堆肥などの元肥を組み合わせています。

枝豆の栽培においては、何よりも「最初が肝心」。植え付けからしばらくの間は、水が切れてしまうと実の出来が悪くなったり、枝ぶりが小さくなったりする一方で、「逆にやりすぎると、豆のできが悪くなる」という特徴も。生育具合をこまめに観察しながら水やりの量を調整するなど、繊細な手入れが欠かせません。

こうして手塩にかけて育てられた枝豆は、主に仲卸業者に卸され、そこからスーパーやデパートで販売されています。高い品質と「京都ブランド」の力もあり、東京や北海道にも送られるなど、地域を越えて多くの人に愛されています。

さやいっぱいにふっくらと膨らんだ実。見るからにおいしそうな、張りのある姿に育ちました。
京都では枝付きで出荷されることが主流ですが、住井さんは実を一つひとつ枝から摘み取って出荷。自動化できる機械もありますが、実に傷がつくおそれがあるため、手作業を貫いています。
摘んだばかりの豆。従来の「白」タイプより、市場での人気が高まっています。

少量でも「良いもの」を。

前職は学習塾に勤め、小中学生を対象にした教室長として経営に携わっていた住井さんが、家業である農業を継いだのが30歳くらいの頃。両親や地域の先輩生産者に教わりながら、農業の技術を習得していきました。

父親が高齢となった現在は、実質1人で農作業を切り盛りしています。「人を雇って生産拡大を図る道もありますが、私は時間が許す限りこまめに手入れをしながら、少量でも良いものを作っていきたいですね」と、品質へのこだわりを語ります。

枝豆の品質において特に気を使っているのが、見た目の良さです。豆がしっかりと膨らんでいることが大切ですが、そのためには肥料をやりすぎないことがポイントです。特に窒素系肥料は、葉や茎を立派に育てるメリットがある一方で、やりすぎると木ばかりが大きくなって実の生育が悪くなるため、カルシウムや硫酸マグネシウムを用いるなど、試行錯誤を重ねています。

一方で、膨らみすぎにも注意が必要。実がひねると(生育しすぎて実が硬くなったり曲がったりすること)、色味も黄色くなってしまうからです。「本来は少し黄色がかったぐらいがおいしいのですが、市場では青々とした美しさが求められますから」と、色合いの管理にも細心の注意を払っています。

こうした品質へのこだわりが結実する場の一つが、JA京都市主催の農産物品評会です。住井さんはほぼ毎年出品しており、これまでに枝豆で特別賞を2回受賞しました。
「受賞できれば励みになるし、ダメだったら次はどうしようかと考える。何より、他の方の野菜を見て勉強できることがありがたいですね」。

品評会には、普段の出荷とは異なり「枝付き」の状態で出品。実の多さと膨らみには特に気を配ります。

豆は三粒が理想ですが、二粒でも十分に大きく育つものも。「みんな同じように太ってくれたら良いんですけど、なかなかそういうわけにはいきませんね」(住井さん)

虫対策も重要。「特にカメムシに汁を吸われると豆の部分が膨らまなくなり、商品価値が下がります」と、適宜農薬を散布し、手塩にかけた豆を守り抜いています。

地域の農業を支え、未来へつなぐ。

品評会への出品にとどまらず、JA京都市吉祥院支部の青壮年部での活動にも積極的に取り組んでいます。活動を始めたのは約20年前。「最初は先輩のお手伝いで行っていたんですが、そこからずっと今でも継続しています」と住井さん。現在は副部長を務め、品評会や組合員のレクリエーション、即売会やお祭りのお手伝いなど、多岐にわたる活動を支えています。

幼児を対象とした芋掘り体験などの食育活動に携わることも。「塾で子供たちに接していた経験が生きているかはわかりませんが、声が大きいので注意を引きつけることはできるかもしれませんね」と笑顔を見せます。

多忙な農作業の合間に行うこうした活動は、JAという協同組合組織を持続させるためだけでなく、自分たちが作った農産物が強く求められていることを実感できるという点でも、貴重な機会になっています。

「例えば即売会をやると、不思議なくらいにたくさん買ってくれるんです。スーパーに行けばもっと安いものがたくさんあるはずですが、何か違うものがあるんでしょうね」と語るように、値段には表れない「価値」を感じ取る消費者がいることは、間違いありません。
「新鮮であることはもちろんですが、地域の生産者が頑張って作っているという事実が伝わることで、安心感があるのかもしれませんね」と住井さん。生産者と消費者が直接ふれあい、つながる場にこそ、これからの日本の農業を支える確かな未来があるのかもしれません。

住井 陽さん
学習塾の教室長を経て、30歳ごろから就農。京都市吉祥院で、なすび、枝豆、ほうれん草、ネギを中心に栽培する。JA京都市吉祥院支部青壮年部で副部長も務める。

おすすめの食べ方
一番のおすすめはシンプルな「塩茹で」。基本は採れたてが一番ですが「茹でてから2日目もおすすめ」と住井さん。「冷蔵庫でキンキンに冷やしておくと、豆の中まで塩味がしっかり染み込んでおいしいですよ」と教えてくれました。

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